『怪物はささやく』
YA文学の研修で紹介があった本1冊目。
癌で亡くなった、シヴォーン・ダウドが遺した原案をもとに、
パトリック・ネスが完成させた作品。
ふたりともイギリスで有名な児童文学賞であるカーネギー賞を受賞した作家です。
中学生の課題図書にもなりましたが、
誰かの死を看取ったことのある方や、今現在近親者に病と闘っている方が
いる方の心にも刺さる一冊だと思います。
難病の母をもつ13歳の少年コナーに、ある日怪物があらわれて
3つの物語を彼に話します。
人は誰しも善と悪のあいだのどこかに位置し、毎日矛盾したことを考えるものだ。
自分の本当の気持ちに向き合う勇気や
人間は、0か100か、正義か悪かでは語りきれない
複雑な心をもつことを教えられ、
そしてそれを許されたような…
そんな気持ちになります。
怪物の話す物語の真の意図にたどり着いた時、
そして怪物が毎晩現れる時間の意味に気づいた時、
涙が止まりませんでした。
挿絵に関してもコナーが抱えている不安や恐怖を
見事に表現しているようで・・・
忘れられない1冊になりました。
『怪物はささやく』
パトリック・ネス(著), シヴォーン・ダウド(原案),
ジム・ケイ(イラスト), 池田 真紀子(訳)
あすなろ書房 / 2011.11
ISBN 978-4-7515-2222-6